
今日はコンパイラによる最適化(compiler optimization)について少し書きたいと思います

コンパイラとは人間がC言語などのプログラミング言語で記述したソースをコンピュータが実行できる形式に変換するソフトウェアのことです。
コンパイラがソースを実行形式に変換する際に、より実行時間を短くメモリを効率的に使用できるようになど、効率的に調整する処理のことを最適化と呼びます。
非常に簡単な例を挙げてみましょう

int func(void)
{
int a = 5;
int b = a * 2;
int c = b + 2;
if( a > b ){
c /= 2;
}
return c;
}
まず、b は 定数を畳み込むことにより、 b = 10 へと最適化されます。同様 c = 12 となります。
次に、条件分岐(if文)の個所は真になることがないことが確定していますので、この個所はデッドコードとして削除されます。
結果、上記のコードは
int func(void)
{
return 12;
}
と最適化されることになります

(※コンパイラにより、また最適化レベルによっても挙動が異なります)
他にも、頻繁に使われる変数をレジスタに割り当て高速にアクセスできるようにしたり、ループ回数が同じである複数のループをまとめることでオーバーヘッドを少なくするなど、さまざまな最適化があります。
コード量が膨大になるゲームプログラムではコンパイラ最適化によって実行速度が大きく向上するケースが多くなるため、我々プログラマーの強力な味方となります

ですが、最適化にも注意が必要な場合があります

例えば、Win32API の ZeroMemoryマクロの最適化による不具合は有名ですよね。
void func(void)
{
char password[100];
// パスワード入力
inputPassword();
// メモリからパスワードを消去
ZeroMemory(password,0);
}
このコードは一見問題なさそうに見えますが、リリースビルドなどでコンパイラの最適化を施すと、ZeroMemoryはコールされないケースが起こり得ます。
最適化では、それ以下のコードでメモリを参照していない変数への代入などの処理を省くように作られているケースが多く、上記の場合ではZeroMemoryをコールしている箇所以下では変数passwordが参照されていないため、ZeroMemoryを呼ぶ必要がないと判断されるのです。
結果、スタックにパスワードが残ることになり、セキュリティホールを招くような事態になる恐れがあります

これを防ぐためには、上記の例ではZeroMemoryの代わりにSecureZeroMemoryマクロを利用したり、ゼロクリアした後に、変数passwwordを参照するコードを書くなどの解決策が挙げられるでしょう。
また、volatile修飾子を利用して、最適化を防ぐ方法もあります。
このように、コンパイラ最適化により思わぬ不具合を招く恐れもあるので、コンパイラの最適化オプションを利用する際は意識してみてください
